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多発性筋炎・皮膚筋炎

皮膚筋炎とは?

皮膚筋炎とは?「多発性筋炎」と「皮膚筋炎」は皮膚筋炎の類縁疾患で、共に筋肉障害が起こりますが、前者は皮膚症状を伴わず、後者は特徴的な皮膚症状を伴います。
臨床調査によれば、両疾患の発症割合は同程度で、毎年約1,000~2,000人が新たに発症すると推定されています。これにより、皮膚筋炎と多発性筋炎を含めた患者数は約2万人以上と考えられ、膠原病の中では関節リウマチ、全身エリテマトーデスに次ぐ第3位の患者数となっています。

皮膚筋炎の症状

膠原病の一種である皮膚筋炎では様々な症状が全身に現れますが、特に有名なのは、特徴的な皮膚症状や筋肉障害、悪性腫瘍を合併しやすいことです。個人によって症状の組み合わせや重症度には差があります。

皮膚症状

皮膚筋炎では特徴的なかゆみを伴う赤い発疹(紅斑)が見られ、約3割にはレイノー現象が現れます。また、皮膚症状は紫外線で悪化するため、日焼けを避けることが重要です。

紅斑

ヘリオトロープ疹

上まぶたがむくみ、赤紫色の発疹が現れます。日本人では紅斑が紫色になることはほぼありません。

ゴットロン丘疹

手指の関節伸側部(手の甲)に現れる、乾燥して盛り上がった紅斑です。

ゴットロン徴候

ゴットロン丘疹に似た、盛り上がりのない紅斑です。手指の関節や肘・膝関節の外側に現れます。

V徴候

首から胸にかけてV字に現れる紅斑です。肩から背中の上部に出る紅斑はショール徴候とよばれます。

レイノー現象(末梢循環障害)

患者様の約30%に見られる末梢循環障害です。寒冷刺激や精神的緊張により、手足の指先が色調変化します(白→紫→赤)。白や紫に変わる際には、しびれや冷感、違和感、痛みを感じますが、潰瘍はほぼ発生しません。予防には指先の保温が効果的です。

筋肉障害

胴に近い中心の筋肉で徐々に発症します。これにより、体を動かす筋肉(骨格筋)の低下が起こり、日常生活動作(ADL)が難しくなります。腕の筋力低下により髪の手入れや高い場所の物の取り扱いが難しくなり、太ももや首、喉の筋力低下により階段の昇り降りや飲み込みが困難になります。なお、筋肉症状がない場合もあり、皮膚症状のみの場合もあります(無筋炎性皮膚筋炎)。

臓器病変

全身の臓器には多様な病変が見られ、特に「肺疾患」「悪性腫瘍」は生命に影響を及ぼす合併症に注意が必要です。

肺症状

「間質性肺炎」は自己免疫が肺を攻撃して起こる合併症で、患者様の30~40%に見られます。主な症状は息切れ・慢性咳・疲労感で、進行すると酸素吸入が必要になります。咳が続き、動くと息切れする場合は早急に受診して下さい。無筋炎性皮膚筋炎は進行が早いため、迅速な治療の開始が重要です。

悪性腫瘍

皮膚筋炎でない場合、がんなど悪性腫瘍の合併リスクが約3倍高まります。定期的にがん検診を行い、優先的に治療する必要があります。特に、抗Tif1-γ抗体が陽性の場合、注意が必要です。

関節症状

関節に痛みや炎症が起こりますが、関節リウマチと違って長期の腫れや関節破壊・変形はほぼ見られません。

心症状

心臓の筋肉が硬くなり、まれに不整脈や心不全が起こります。

その他、発熱や全身の倦怠感、食欲不振、体重減少といった全身症状が起こります。

皮膚筋炎の原因

皮膚筋炎は自己免疫が筋肉や皮膚を攻撃して起こることはわかっていますが、発症メカニズムは未解明です。先天的な遺伝的要因と後天的な環境的要因が複雑に影響し合い、発症すると考えられています。

皮膚筋炎の検査・診断

多様な症状が現れるため、問診・診察・検査を通じて症状の評価や臓器病変の有無を確認し、多角的に診断します。

皮膚筋炎の検査

問診・診察

自覚症状、発症時期、膠原病や自己免疫疾患の家族歴、生活への影響などについて詳しく伺います。紅斑や筋肉については視診・触診を行います。

血液検査

別の疾患との鑑別や病勢、回復段階の予測などに重要な検査です。皮膚筋炎では筋原性酵素(CPKなど)の上昇や特定の自己抗体(抗ARS抗体など)が血中に認められます。

針筋電図

微量の電流を使って筋肉の反応を測定する検査で、筋力低下の原因が神経か筋肉かを判断します。

筋生検

皮膚を切開し、筋肉の一部を採取して、染色した細胞を顕微鏡で詳しく検査します。

さらに、皮膚生検、MRI検査、心電図、CT検査、肺機能検査などが必要に応じて行われます。また、必要であれば近隣の関連医療施設をご紹介します。

皮膚筋炎の診断

診断は、厚生労働省研究班の診断基準改訂版(2015年)、欧州リウマチ学会(EULAR)および米国リウマチ学会(ACR)の分類(2017年)に従って行われます。主に皮膚症状、筋力低下、血清中の筋原酵素や自己抗体の有無、肺病変、筋生検や針筋電図検査の結果を基に、これらの基準に従って判断されます。重症度は筋力検査、血液検査、活動性発疹の有無、合併症の有無などで評価します。

皮膚筋炎の治療

皮膚筋炎の重症度や症状は患者様によって異なり、患者様の病状に合わせた薬物療法が治療の基本となります。

薬物療法

ステロイド薬を中心に行いますが、悪性腫瘍を合併している場合には、その治療が優先されます。主な薬を以下にご紹介します。

副腎皮質ステロイド

炎症・免疫を抑える効果があり、筋肉障害や皮膚症状の改善に有効ですが、多量・長期間の使用は感染症リスクや副作用(骨粗しょう症、食欲増進、高血圧、糖尿病など)があるため、当院では効果と副作用のバランスを考慮しながら処方します。皮膚症状に限れば、局所ステロイド薬(軟膏)が優先されます。

免疫抑制剤

免疫機能を抑制するもので、効果不十分や副作用などの理由でステロイドが制限される場合や、ステロイドの減量で病勢が再燃する場合に使用されます。急速に進行する間質性肺炎を合併したケースでは、早期からステロイドと併用する必要がありますが、感染症にかかりやすくなるなどの副作用があるため注意が必要です。

リハビリテーション

筋肉の回復にはリハビリテーションや理学療法が効果的ですが、急性期の筋力低下症状では逆に筋肉を損傷する恐れがあります。治療開始時は安静にし、痛みが軽減してCK値が正常になってから、軽い運動から始めることをお勧めします。

紫外線対策

膠原病による皮膚症状は紫外線に影響されるため、夏季は直射日光を避け、日焼け止めや日傘・帽子の使用など紫外線対策が必要です。