関節リウマチは、どんな疾患?
関節リウマチは免疫システムが異常を起こし、免疫が手足などの関節を攻撃し、腫れて痛む疾患です。進行すると、骨や軟骨が破壊されて関節が変形し、動きが困難になり、日常生活に支障をきたします。関節の他に、眼や肺など全身に炎症が広がる場合もあります。
リウマチの初期には、朝の関節周囲のこわばり、時には熱っぽさ、倦怠感、食欲不振などの症状が現れます。
やがて小さな関節が腫れ、徐々に手首やひじ、肩、足首やひざ、股関節など全身の関節に腫れが広がっていきます。特によく使用する関節は腫れやすいです。
なお、「リウマチ熱」という疾患がありますが、これは溶連菌感染症という細菌感染によって起こるもので、関節リウマチとは区別されます。
原因は何?
未だ原因は解明されていません。
人間の体には、細菌やウイルスなどの外敵から体を守る機能(免疫)が備わっています。関節リウマチは、この機能に異常が生じ、関節を守る組織や骨、軟骨などを外敵とみなして攻撃し、破壊することで発症します。
このような疾患は「自己免疫疾患」と呼ばれ、体質的にかかりやすい方が、何らかの原因で発症すると考えられています。未だ原因は解明されていませんが、細菌やウイルスの感染、過労、ストレス、喫煙、出産、怪我などが引き金になることがわかっています。
また、リウマチは同じ家系の中で発症することもありますが、一般的に遺伝性はあまり高くありません。
かかりやすい人は?
日本において、リウマチ患者数は少なくとも70万人、多くて100万人とも推定され、毎年約1万5千人が新たに発症しています。全人口に占める割合は0.5〜1.0%であり、この割合は他の国々でもほぼ同様で、地域ごとの大きな差は見られません。
年齢別に見ると、30〜50代での発症数が多く、人口1,000人当たりでは女性が5.4人、男性が1.1人で、特に女性に発症しやすい疾患であることが明らかです。
どんな症状がありますか?
1)全身に起こる症状
リウマチには活動期と非活動期があり、活動期には、体の様々な部位に症状が出やすくなります。症状としては、微熱、体重減少、貧血、リンパ節の腫れ、目や口の渇き、息切れ、倦怠感、疲労感などが挙げられます。
2)関節に起こる症状
2.関節炎
関節が熱を帯びて腫れ、動かすと痛みを伴いますが、赤く腫れることはほとんどありません。このような関節炎は、手首、手の指の付け根、第二関節、足の指の付け根などの小さな関節や、足首、肩、肘、膝、股関節などに起こります。左右対称に起こったり、場所を転々として起こったりするのが特徴です。
3.関節水腫(かんせつすいしゅ)
関節水腫とは、関節の炎症によって、関節内に大量の水分がたまっている状態です。膝関節に発症すると、膝のお皿の周りが腫れ、膝の裏が袋のように膨らみます。
4.腱鞘炎(けんしょうえん)
腱は手や足の筋肉が骨に取り付く部分にあり、その周囲を腱鞘と呼ばれる鞘状の組織が包み込んでいます。腱や腱鞘が炎症を起こすと、腫れが生じ、指や体の他の部分が動きにくくなります。一般に「ばね指」と呼ばれる症状では、腫れた腱が腱鞘に挟まれて動くため、指がばねのように跳ね上がります。
5.滑液包炎 ( かつえきほうえん )
関節の周囲にある袋状の組織を滑液包といいます。この袋には関節内の摩擦を緩和するゼリー状の滑液が入っています。ここに炎症が起こると、袋の中にさらに多くの滑液が蓄積し、腫れや痛みを引き起こします。滑液包炎は、肘、足首、膝の前部で最も一般的に見られます。
6.関節変形
リウマチが進行すると、関節の破壊や筋肉の萎縮などがおこり、関節が変形することがあります。外反母趾や手足の指が外を向いている、曲がっているなどの特徴的な形は、リウマチ変形と総称されます。
3)関節以外に起こる症状
1.リウマトイド結節(けっせつ)
肘や膝によく発症し、通常は痛みを伴いません。大きさは米粒から大豆くらいまで様々です。リウマチの活動性が高い状態で摩擦などの刺激で誘発されます。
2.肺障害
リウマチは肺に障害を起こすことがあります。リウマチ性肺疾患と呼ばれる間質性肺炎や肺線維症の症状には、息切れや乾いた咳などがあります。肺に水がたまる胸膜炎が起こることもあります。なお、リウマチ治療薬や感染症も肺に障害をもたらす可能性があるため、原因を詳細に診察することが重要です。間質性肺炎がある場合、増悪させるリスクがある薬剤は使用が避けれます。
3.悪性関節リウマチ
リウマチでは、まれに血管の炎症が重篤な症状を引き起こすことがあり、この状態を悪性関節リウマチと呼びます。太い血管の炎症は心筋梗塞、間質性肺炎、腸間膜動脈血栓症などの原因となります。一方、四肢の細い血管の炎症は皮膚潰瘍や神経炎を誘発することがあります。
4.二次性アミロイドーシス
リウマチによる激しい炎症が長期間続くと、アミロイドというタンパク質が体の各所に蓄積します。アミロイドは腸管に蓄積すると下痢を引き起こし、心臓では心不全を、腎臓では腎不全を引き起こします。
このような症状が現れる前に、適切な治療を受けることが重要です。リウマチの疾患活動性と、関節外病変は相関するものが多く、活動性をコントロールすことも重要であります。
関節症状が起こるメカニズム
1滑膜組織に炎症が生じます
軟骨はクッションとして機能し、関節液は潤滑油として作用して、関節の滑らかな動きをサポートしています。そして関節液は滑膜(かつまく)によって生成されます。
滑膜は薄い膜と柔らかな組織から構成され、これが滑膜組織として関節を内部から包み込んでいます。リウマチによる炎症は、滑膜組織から発生し、徐々に軟骨や骨に影響を及ぼしていきます。そのため、疾患が滑膜組織に制限されている段階で治療を開始すれば、軟骨や骨の損傷を未然に防ぐことも可能です。
2炎症性サイトカインなどにより悪化します
リウマチの炎症が進行すると、滑膜組織からはTNFα、インターロイキン1(IL-1)、インターロイキン6(IL-6)などの炎症性サイトカイン(炎症をもたらす物質)、中性プロテアーゼなどの酵素、活性酸素、一酸化窒素などが相次いで産生されます。 特に中性プロテアーゼは軟骨の炎症を悪化させることが知られています。
同時に、炎症性サイトカインは骨を破壊する機能を担う破骨(はこつ)細胞を活性化させてしまいます。破壊された骨の量が、毎日新しく作られる骨の量を上回ると、骨は壊れていきます。