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関節リウマチの治療と注意点

関節リウマチの治療方針は?

多くの方にとって寛解が、関節リウマチ治療の目標です。寛解とは、関節リウマチの症状や徴候の大部分が消失し、疾患が抑えられている状態のことです。合併症などを持つ一部の方は、LDA(Low Disease Activity、低疾患活動性)を目標にすることもあります。

そのためには

  1. 関節の痛みや腫れを無くす(臨床的寛解)
  2. 骨や関節の破壊の進行を阻止する(構造的寛解)
  3. 生活の質(QOL)を向上させる(機能的寛解)

この3つの要素が重要です。 近年、治療法は著しく進歩し、疾患の早期段階から適切な治療を行うことによって寛解を達成・維持することが可能になってきています。そして、早期に治療することは骨破壊というダメージを最小限に抑えることに繋がり、変形による日常生活の低下や変形による痛みを避けることができます。

治療はどんなことをするの?

治療法は、症状や進行度に応じて、薬物療法、手術療法、リハビリテーションなどが選択されます。近年進歩の著しい薬物療法を適切に行うことがこの中でも重要となります。

1. 薬物療法

薬物療法の目的は、関節の腫れや痛みを軽減し、関節破壊の進行を抑えることです。

2. リハビリテーション

リハビリテーションには、関節の可動域を拡げ、血液の循環を促進して痛みや筋肉のこわばりを解消するための運動療法や、患部を温めて痛みや硬さを軽減させる温熱療法などがあります。

3. 手術療法

手術療法には、増殖した関節の滑膜を切除する滑膜切除術や、壊れた関節を人工関節に置き換える機能再建術などが含まれます。

関節リウマチの薬はどんなものがありますか?

関節リウマチの治療は、抗リウマチ薬(DMARDs)が中心になります。その代表は、メトトレキサート(MTX)、生物学的製剤、JAK阻害薬などであります。ステロイド、消炎鎮痛薬(NSAIDs)は、DMARDsが効くまでの補助薬になります。

1)-1抗リウマチ薬(DMARDs:ディーマーズ)

関節リウマチの原因となる免疫異常に働きかけ、疾患の進行を抑える効果があります。加えて、骨破壊を抑える力を持つ薬剤になります。抗リウマチ薬は現在、関節リウマチ治療の第一選択薬となっています。 これらの薬が効果を発揮するまでには、早いものは数日、遅いものは3~6ヵ月かかるため、抗炎症薬と鎮痛薬を併用することもあります。効果が不十分な場合は、複数の抗リウマチ薬との併用や、他の抗リウマチ薬への変更も考慮されます。

-1 従来型

メトトレキサート(MTX)がこの代表になります。日本でも世界でも第一選択薬になります。その理由は、コストパフォーマンスが優れていることにあります。 その他の従来型DMARDsは、リマチル、アザルフィジン、プログラフ、ケアラムなどがあります。

1)-2 生物学的製剤

炎症を引き起こすサイトカインであるIL-6やTNFαの働きを阻害し、関節破壊の進行を阻止します。 この薬は注射(点滴または皮下注射)で投与され、投与間隔は週2回から2ヵ月に1回と、治療薬によって様々です。通院の頻度やライフスタイルに合わせてお選びいただけます。

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1)-3 JAK阻害薬

炎症を誘発する複数のサイトカインの活動を抑制し、関節の炎症を鎮める内服薬です。抗リウマチ薬の効果が不十分な場合に用いられますが、これにより免疫機能が低下し、感染症にかかりやすくなる可能性があります。最近、欧米より悪性腫瘍と心血管障害のリスクがある人には注意するようにコメントがありました。

2) 消炎鎮痛薬(NSAIDs:エヌセイズ)

関節の痛みを和らげる効果があります。即効性がありますが、関節リウマチの根本的な炎症を取り除くものではありません。骨破壊抑制効果もありません。関節の腫れや痛みが長引く場合は、継続的に消炎鎮痛薬を服用することがあります。 副作用として、腎機能悪化、胃潰瘍や十二指腸潰瘍となる場合もありますので、十分な注意が必要になります。

3) ステロイド

関節の腫れや痛みを効果的に和らげる強力な抗炎症剤です。通常は、消炎鎮痛薬や抗リウマチ薬で十分な効果が見られない場合、または効果が安定まするまでの橋渡しに使用されます。ただし、一旦ステロイドを使用し始めると、中止した際に自分の体から産生されていたステロイドが産生されないため、倦怠感、全身痛が生じ、中止が難しくなることがあります(特に高齢者)。連用に伴い感染症、糖尿病・高脂血症、骨粗鬆症、皮膚などの組織脆弱性などのリスクがあるため、必要最低限の使用にとどめるが必要があります。

その他の薬

関節リウマチの治療には、関節に注射するヒアルロン酸製剤など、さまざまな薬が使われます。

治療で気を付けることは?

関節リウマチでは、関節の破壊が発症初期から急速に進むことが分かっています。関節の腫れや痛みが軽度であっても、関節内で炎症が続く可能性があり、潜在的に関節破壊が進行中ということも考えられます。 2010年に国際的な学会が示した関節リウマチの治療ガイドラインでは、推奨項目において「臨床的寛解」と呼ばれる、症状がない状態を治療目標とし、その達成のために薬物療法を最低でも3ヵ月ごとに検討するよう定めています。 治療目標が達成され、臨床的寛解が維持されている場合、薬物の減量や中止が検討されることもあります。